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ハーブと原産地

植物の図鑑や資料を見ると原産地が記されています。原産地は栽培をするうえで、かなり重要な指標になります。ここでは地理の知識を使って、原産地によってハーブの育て方がどのように違うかを見ようと思います。

函館はどんな気候か

まず自分の地域の気候がどんな気候かを知ることが重要です。知らなければ、他の地域と比べようがありません。函館は1,980年代は冷帯でしたが、2,000年ごろから温帯になっています。冷帯と温帯の間の性質をもっています。津軽海峡は潮目(暖流と寒流がぶつかっている場所)があるので、様々な種類の魚介類はとれます。最近ではイカはそれほど採れなくなっていて、ハマチの水揚げ量が増加傾向です。

雨温図を見ると、函館は西岸海洋性気候に近いです。つまり降水量が毎月同じくらいあるのです。最寒月は1月で、1月の平均気温はおよそ−2.8度です。冬は一番寒いときで-10度くらいです。雪はよほどのことがない限り極端には降らないです。

蝦夷梅雨と呼ばれる梅雨が起こることもありますが、関東の梅雨に比べたら湿気は弱いです。(ちなみに梅雨は梅雨前線が原因であるが、蝦夷梅雨はオホーツク海の気団が原因です。)

北ヨーロッパ原産のハーブ

ミントやレモンバーム、タイム、コモンセージ、オレガノ、パセリなどがあります。非常に幅広い地域で育ちます。函館と気候が近いので、全体的に育てやすいです。北ヨーロッパで、函館と気候が近いのはフランスのパリです。パリはフランスの北側にあたります。逆にフランスの南側はブルゴーニュが代表的で、地中海性気候となります。

初めてハーブを育てるなら、北ヨーロッパのハーブがおすすめであると思います。水はけもよほど悪くな限り大丈夫です。ただ関東のように梅雨が多い場所では、水はけには注意が必要でしょう。それを差し引いても丈夫なハーブが多いです。また傾向としては葉っぱが柔らかくてみずみずしいです。対照的なのは地中海系のハーブです。

レディースマントは春から初夏にかけて黄色い小さな花を咲かせます。葉っぱも紅葉みたいで特徴的です。葉についた水滴が良質の化粧水になると言われていますが、私は特に使ったことはありません。

レモンバームは、葉っぱが大きいとき(柔らかいとき)に、少しずつ収穫するのがおすすめです。ハーブティーやお風呂に使うと良いです。レモンバームは、夏になってしまうと、大きく茎が伸びてしまい花も咲きます。そういったときは思い切ってバッサリと切るのもありです。そうすると新芽が伸びてきて、また新しい葉っぱを秋に収穫できるからです。

面白い使い方としては、夏に切り戻したレモンバームをマルチングの材料にしてしまうのです。とくに育苗をしている場合は、冬が近くなったら、苗の上に枯れたレモンバームの茎を乗せるのです。マルチングに関してはまた違う記事で取り上げたいと思っています。

北アメリカ原産のハーブ

モナルダは北アメリカ原産です。こちらも函館と割と気候が近いので育てやすいハーブです。よほど土が悪くない限り問題ないでしょう。鉢もプラスチックの鉢で十分です。モナルダは非常に大きくなるので地植えがおすすめです。モナルダは、暑い時期に花がさくので貴重なハーブとも言えます。

日本原産のハーブ

一番育てるのに確実なのは、日本原産のハーブを育てることです。シソやネギ、アサツキ、ノビルなどがあります。和ハーブと呼ぶこともあります。家庭菜園のサブとして育てるのも十分考えられます。初めてハーブを育てるときは日本原産のハーブは育てやすいです。

しかしもっと参考になることはあります。それはあなたの近所でよく育っている植物です。だから周りの庭に目を向けると思わぬヒントがあるかもしれませんよ。

熱帯地域原産のハーブ

センテッドゼラニウム、カレーリーフ、レモンバーベナ、レモンマートル、バジルなどがあります。どれも年がら年中熱いところに暮らしているハーブです。太陽にガンガン当てて良いです。函館では冬越しはできないので、バジルは一年草扱い、センテッドゼラニウムやカレーリーフ、レモンバーベナ、レモンマートルは、鉢植えで育てることになります。

熱帯系のハーブは、函館の場合、夏はそれなりに暑いので外に出しても大丈夫です。水はけもそれほどハードに考えなくても問題ないです。

冬の場合はハーブによって違います。経験上、レモンバーベナとレモンマートルは玄関が良いです。これらは熱帯地域が原産地ですが、それなりに寒さに強いです。センテッドゼラニウムはどっちでも大丈夫です。ストーブが効いている部屋に置いておくと、冬でも成長します。

カレーリーフは確信はできないですが、ストーブの効いている部屋が安全です。適温がバジルと似ています。最近はもう少し寒くても大丈夫かもしれないと思っています。暖房の効いていない和室でも育ったからです。(暖房の効いているリビングの隣に和室があります。)

  • バジルを外に出してもいい時期 ≒ カレーリーフを外に出せる時期
  • バジルを刈り込むべき時期(枯れ始めそうな時期)≒ カレーリーフを中に入れる時期

この近似式は重要です。上の式はだいたい6月上旬くらいで、下の式は9月下旬くらいです。カレーリーフはいきなり家の中に入れるのではなく、最初は玄関フードに置いた後に、室内に取り込むと良いです。つまりワンステップを踏んでから、室内に入れるのです。

熱帯系のハーブの問題店として、春になったときに、どのタイミングで外に出すかがあります。もちろん寒いときに出したらお陀仏になります。函館の場合、4月は早すぎます。センテッドゼラニウムは、函館では桜が咲くころなら外に出しても大丈夫です。バジルやカレーリーフは野菜を植える時期(5月下旬から6月くらい)に出します。レモンバーベナやレモンマートルはその中間くらいですが、若干速めでも問題は少ないです。念のために玄関フードなどで様子を見てから、外にだすのも手でしょう。

センテッドゼラニウムは、初夏くらいに花が咲きますが、肥料のやり方によっては四季咲きになる場合もあります。どちらかと言うと香りを楽しむゼラニウムなので、あまり私は花には執着していません。寒くなると家に入れています。ガンガンストーブが効いているところにおいても平気です。乾燥にもかなり強いです。バッサリと切り戻してもすぐに新芽が出て復活します。

レモンバーベナは相当強いハーブで、かなり切り詰めても新芽が出ます。盆栽風に仕立てるのもあります。ハーブとしてはかなり強いレモンの香りがします。たまに小さな白い花を咲かせます。小さいレモンバーベナはひ弱そうに見えるかもしれません。しかし本当はものすごい強い木です。太陽がよく当たる場所に育てると元気に育ちます。葉焼けという言葉を知りません。

地中海性気候原産のハーブ

ローズマリー、オリーブ、月桂樹、セージ、ラベンダー、ホワイトセージなどです。気候は地中海性気候です。夏季少雨気候とも言います。夏はあまり雨が降らないのですが、冬はけっこう降水量が大きいです。土壌がアルカリ性になるので、これらのハーブを育てるときは苦土石灰などを入れることによってアルカリ性にすると良いこともわかります。また地中海系のハーブは、葉っぱの傾向が北ヨーロッパとは違い、硬い葉っぱであることが多いです。いかにも夏の乾燥には強そうです。

梅雨がある地方では注意が必要です。剪定をすることにより、風通しを良くしたり、鉢を素焼きやテラコッタにすることにより水はけを良くする工夫が大切であることが分かります。

函館ではどのように育てれば良いのでしょうか?「地中海なんて暑い地域だから育てにくい」と思うかもしれませんが、意外と悪くないです。むしろ夏は関東ほど多湿ではないので、すんなりと育てることができます。函館は夏に関しては割と有利です。

問題は冬です。ローズマリーやオリーブ、月桂樹は函館で冬越しはできません。これらのハーブは鉢植えで育てることになります。冬場は鉢を家の中に取り込むのです。

冬場に注意する点としては、セントラルヒーティングがあります。セントラルヒーティングの部屋は、観葉植物や熱帯系のハーブにとっては住心地が良いのです。しかし地中海のハーブの場合は乾燥しすぎる恐れがあります。そのため時々葉水をかけるなど栽培をするときは工夫を要します。

「えっ地中海のハーブって乾燥に強いんじゃないの?なんで葉水なんか?」と思う方は地中海性気候の定義をもう一度見直してください。地中海性気候は、冬は多雨なのです。そのため地中海のハーブは、冬は多雨の環境に適応しているので、冬はある程度の水が必要なのです。ただしやりすぎると、根腐れを起こすので、加減することが必要です。地植えと鉢植えでは環境が違うので同列に語ることができないのが、難しい面でもあります。どのくらい加減するかは経験としか言いようがないです。

ラベンダーの剪定は、涼しくなれば始めても問題は少ないです。しかしもっといい時期があります。それは雪が溶けてからです。とくにラベンダーを植えたばかりであったり、寒さに弱そうな品種であるなら、早春に剪定するのが有効です。新芽が出るのを様子を見つつ切る流れとなります。本州以南では冬剪定のものが、北海道だと春剪定になることがけっこうあります。バラも好例です。

コモンセージは晩春から初夏にかけてラベンダー色の花を咲かせます。葉っぱは臭み消しに使えます。薫製を作るにあたっては必須ハーブの一つと言っても言い過ぎではありません。セージを作ったきっかけは、妹がベーコンを作りたくて市販のセージを使ったのですが驚くほど品質が悪くて驚いたことがきっかけです。最初に栽培したのは妹です。自然乾燥させたセージは素晴らしい香りがします。

むすび

原産地を見るだけでも、ハーブを育てる上で様々なことがわかります。しかし過信は禁物です。同じ地域でも、どのような環境で育っていたかによっても、育て方が異なることもしばしばあります。日当たりが好きなのか、乾燥に強いのか、背丈はどうなのか、石ばかりの場所でも大丈夫なのか、考えることはたくさんありますが、それが園芸の醍醐味であると思っています。いずれにせよ原産地も重大な指標の一つであることは変わりません。

gardening/herb-origin.txt · 最終更新: 2020/08/27 12:50 (外部編集)